夜驚症

── 眠りの奥から響く叫び。目を開けても、まだ夢の中。

夜驚症(Night Terror)は、深い眠りの中で突然泣き叫んだり、強い恐怖の表情を見せたりする現象です。
特に子どもに多く、数分後には静まり、翌朝にはその記憶が残らないのが特徴です。

定義と特徴

夜驚症は、ノンレム睡眠の深い段階(徐波睡眠)から部分的に覚醒する際に起こる現象です。
夢を見て叫ぶというより、夢と現実の境界で感情だけが噴き出す状態といえます。

心理学と生理学の理解

夜驚症は、睡眠覚醒機構の未成熟または一時的な乱れによって起こるとされます。
乳幼児〜小学校低学年の子どもに多く、成長とともに自然に消えていくことがほとんどです。
精神的ストレス・発熱・寝不足などが引き金になる場合もあります。

成人に見られる場合は、強いストレスや外傷体験(トラウマ)と関連することもありますが、
多くは一過性で、睡眠のリズムを整えることで軽減します。

文化と歴史のなかの夜驚症

古来、夜中に突然叫ぶ子どもは「霊に取り憑かれた」「狐が通った」などと恐れられました。
西洋では「Night Terror(夜の恐怖)」と呼ばれ、悪魔の仕業と考えられた時代もあります。
しかし現代の睡眠学では、脳が深い眠りから安全に覚醒できずに“足を取られている”状態として説明されます。

スピリチュアルな視点

スピリチュアルな解釈では、夜驚症は「感受性が高い魂が、まだ肉体のリズムに慣れていないサイン」。
子どもが眠りの世界に入るとき、現実との境界を行き来するために恐怖や叫びが生じると考えられています。
家族や周囲の人が安心と祈りの場を保つことで、症状が落ち着くケースもあります。

家庭でできるケア

成人の場合のヒント

大人の夜驚症では、仕事・心労・抑圧された感情などが要因となることがあります。
入眠前の呼吸法・温熱ケア・軽いストレッチ・ハーブティーなどで、身体を“ゆるめる”ことが大切です。

より深い理解とケアを求める方へ
睡眠覚醒のリズム調整、呼吸瞑想、悪夢ケアやグラウンディングなどの方法は、
「眠りの研究室」にて実践ガイドを掲載予定です。
眠りの研究室へ →

夜驚症が伝えるもの

夜驚症は、恐怖そのものではなく、心が成長する過程で起きる“はざまの揺らぎ”
それは魂が眠りの世界に慣れていく小さな通過儀礼でもあります。
周囲が安心の灯を保つことで、やがて静かな眠りへと導かれていくでしょう。

← 境界にある夢に戻る