悪夢は、ときに心を守ろうとして、強いかたちで現れる夢です。 見るたびに疲れてしまう夢、似た場面が何度もくり返される夢は、 「そのままにしない」ための優しい工夫が必要になります。
ここでは、イメージ・リハーサル・セラピー(IRT)の考え方をベースに、 ご自分で試せる範囲のセルフワークを、静かな手順でまとめました。
※ 強いトラウマ体験やフラッシュバックが出る場合は、無理に一人で取り組まず、 医療機関や心理士などの専門家と一緒に進めることをおすすめします。
悪夢ケア(IRT)とは
IRT(イメージ・リハーサル・セラピー)は、 「怖い夢のストーリーを、起きているときに少し書き換えておく」 技法です。 書き換えは「現実的であること」よりも、 「自分が少し安心できる展開になっていること」を優先します。
夢そのものと戦うのではなく、 夢の「一番つらい瞬間」に、別の出口や守りを用意しておくイメージに近いかもしれません。 少しずつ繰り返すことで、悪夢の頻度や強さが和らぐと報告されています。
「悪夢を消す」のではなく、「悪夢に呑みこまれないための橋」をかける── それが IRT のイメージです。
基本ステップ(昼のうちに行うワーク)
以下は、自宅でできるシンプルな手順です。 1回で何も変わらなくてもかまいません。 「少しずつ怖さを弱めるための練習」として扱ってみてください。
1. 夢を選び、短く書き出す
- 最近よく見る悪夢をひとつだけ選び、 ノートに「短く」「箇条書き」で書き出します。
- その夢の中で「一番つらい瞬間」を一つだけ見つけ、 行や段落を分けて印をつけます。
- その瞬間の展開を、「もしこうなったら少しマシになる」形に書き換えます。 例)助けが来る/場面が止まる/光が差して場面が終わる、など。
- 書き換えたバージョンだけを使って、 新しい夢のストーリーを 5〜10行程度で書き直します。
- そのストーリーを、穏やかな呼吸とともに 1日1回、数分だけ読み返します。 読む時間帯は、できれば夕方〜夜のはじめがおすすめです。
ハッピーエンドである必要はありません。 「そこまで怖くないところで終わる」「安全地帯に移動する」だけでも十分です。
2. 自分を守るためのルール
- 扱う夢は一度にひとつだけにする。
- 書く時間は 10〜15分まで。長時間続けない。
- つらさが強くなってきたら、すぐに手を止める。
- 終わりに「今はここにいる」と声に出し、現在の感覚を確かめる。
書き終えた後は、温かい飲み物を一口飲む、 窓を開けて深呼吸するなど、 「ワークはここで終わり」と体にも伝える合図を入れてあげると安心が残りやすくなります。
夜にできるセルフケアのプロトコル
1. 就寝前の準備
- 就寝1時間前になったら、怖いニュースや刺激の強い映像から離れる。
- 明日の不安やタスクは「3行メモ」にして机の上へ。ベッドには持ち込まない。
- 4-6呼吸(4秒吸って6秒吐く)を 2〜3分だけ行い、身体の力をゆるめる。
- 「今夜の合言葉」をひとつ決め、心の中でそっと繰り返す。 例)「ここは安全」「夢は夢として眺める」など。
自然療法でととのえる悪夢ケア(バッチフラワー)
夜のセルフケアに加えて、フラワーエッセンスで 恐怖や不安の“質”をやわらかくする方法があります。 バッチフラワーから、悪夢に特化した 3 本を厳選しました。
- Rock Rose(ロックローズ): 極度の恐怖・パニック型の悪夢に。追われる夢や叫びたくなる夢に。
- Aspen(アスペン): 正体不明の霊的な恐怖に。“気配だけが怖い” という夢に特に強い。
- Star of Bethlehem(スターオブベツレヘム): 過去のショック・喪失・悲しみが夢に出る時に。亡くなった人の夢にも。
バッチは夜に数滴飲むか、少量を水に垂らして枕元に置くだけでも 心が静まり、夢の感情がやわらぐ人が多い自然療法です。 霊的な悪夢に悩む方は、悪夢ケア(祓い編) も参考にしてください。
2. 安心の象徴をそばに置く
無意識は、ときに「形」や「象徴」を通して安心を受け取りやすいと言われます。 眠る場所に、小さな「守り」のモチーフを置いてみます。
- 手触りのよい布・クッション・ぬいぐるみなど。
- 落ち着く香り(ラベンダー/ネロリなど)を、薄く短時間だけ。
- 写真・お守り・カードなど、「守られている」と感じるもの。
- 安心する言葉を書いた小さな紙片。
特別なものでなくてかまいません。 あなた自身が「これがあると少しホッとする」と思えるものが、いちばんの守りになります。
専門家に相談したほうがよいサイン
次のような状態が続いているときは、 一人で抱え込まず、医師や臨床心理士などの専門家に相談することを強くおすすめします。
- 悪夢がほぼ毎晩続き、日中の生活に支障が出ている。
- 夢の内容が、過去の事故・暴力・災害などの体験と重なっている。
- 夢を思い出しただけで動悸や息苦しさ、強い不安が起こる。
- 「眠ること自体」が恐ろしくなり、極端に睡眠時間が短くなっている。
- 気分の落ち込み・意欲低下が長く続いている。
心を守ることは、「全部自分だけでなんとかする」ことと同じではありません。 信頼できる人や専門家と一緒に、夜を少しずつ安全な場所に変えていくことも、 大切な選択肢のひとつです。