桔梗
眠れる花のエッセイ
七夕・星を抱く花 ― 桔梗
7月6日

七夕の夜空に、そっと静かに花開く星がある。紫色に透き通るその花びらは、まるで天空からこぼれ落ちた星のかけらのよう。桔梗という名前のこの花は、星空に還れず、地上で故郷の星に恋をしているのかもしれない。

桔梗は七夕の夜になると、星たちと語り合うという。「今年もまた会えましたね。遠くの星々よ、あなたたちを待っていました」と優しく囁くその声は、風に揺れながら天の川に向かって静かに響く。星たちは優しくまたたき、その囁きに応えるように淡い光をそっと花びらに降らせる。

桔梗の花の美しい青紫色は、古来から日本で「桔梗色(ききょういろ)」として親しまれてきた。この色には鎮静や癒しの効果があり、心を穏やかに整え、静かな安心感をもたらすという。青い花の多くが持つ夜空や星と共鳴するような色調は、地球に降りた星のような不思議な光を宿しているのかもしれない。

桔梗の花

桔梗を眺めていると、懐かしい記憶や密かに抱いていた願いが心に蘇る。子供の頃短冊に託した夢、大切な人へ伝えたかった言葉、夢を告げる前に消えた流れ星…。

ある日、幼い子供が教えてくれた。
「ママはお星さまよりかわいいよ」
その瞬間、日常のすべてがふわりと優しい光に包まれた気がした。
子供の言葉はまるで星のように、ほんの一瞬で世界を照らしてしまう。

ふとそんなことを思い出していると、
花びらに秘められた星の輝きが、そっと心にささやく。
「あなたは今、どんな夢を持っていますか?」
夢はいつでも言葉にできるようにしておいてね。
祈りの瞬間は、一瞬で過ぎてしまうから。

七夕を前に、静かな夏の夜に星のような姿で涼しげに咲く桔梗が見たくなった。たとえ曇り空で星が見えなくても、地上で咲き誇る星の落とし子たちが、私の夢を届けてくれる気がする。

星の輝きを宿した紫色の花、桔梗――。
今宵も静かに、あなたの願いをそっと見守っている。

薔薇 茉莉花

桔梗色の不思議な意味